本日、政府より「被災地等における安全・安心の確保対策について」が発表されました。
結構なボリュームですが、ようやく政府が具体的な方針を立ち上げたことから、さっそく紹介させていただきたいと思います。
【以下転載開始】-------------------------------------
被災地等における安全・安心の確保対策について
平成23年4月6日
被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム決定
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被災地及び福島第一及び第二原子力発電所事故に係る避難指示対象地域等においては、混乱に乗じた犯罪等の発生が懸念されるとともに、その他の地域においても、人の善意に乗じた詐欺等の発生が懸念される。
国を挙げてこの震災を乗り越えていかなければならない状況においては、国民のお互いの信頼感が重要であり、被災地等において、こうした心無い犯罪が行われることは、地震・津波等の被害で厳しい状況にある被災者の方に追い打ちをかけることになる。
被災地等における安全・安心の確保は、正に政府を挙げて取り組むべき課題であり、関係省庁が緊密に連携して総合的に対策を進めていかなければならない。
このため、別紙のとおり、「被災地等における安全・安心の確保対策」を取りまとめた。
関係省庁においては、同対策に基づき、各種施策を着実に推進し、被災地等における安全・安心の確保に万全を期すこととする。
また、新たな情勢の変化に応じ柔軟かつ効果的な措置を講じていくため、必要に応じて別紙の見直しを行うこととする。
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別紙
被災地等における安全・安心の確保対策
1 被災地等の治安回復・維持
(1) 被災地等における犯罪の取締り機能の回復・維持
【警察庁・国土交通省】
被災地等の治安情勢を踏まえ、必要な捜査体制等を構築した上で、初動捜査の強化を図ること等により、被災地等における各種犯罪の取締りを推進する。
また、海上保安庁においては、被災地周辺海域の船艇・航空機による災害救助活動等に合わせ、不法行為の警戒を実施し、適切な監視取締りを推進する。
(2) 震災に便乗した悪質商法、義援金名目の詐欺、環境犯罪等への対策
【警察庁・金融庁・消費者庁・総務省・法務省・経済産業省・国土交通省・環境省】
震災に便乗した悪質商法、義援金名目の詐欺等が、被災地以外の地域も含めた全国各地で発生しているほか、被災地及びその周辺海域においては不法投棄等の環境犯罪の発生が懸念されることから、これらの犯罪に係る被害の拡大防止等を図るため、関連情報の収集・共有を行い、取締りの徹底を図るとともに、関係省庁が連携し、あらゆる機会や媒体を活用した被害防止のための広報啓発活動、犯罪利用口座凍結のための金融機関への情報提供、関係業界に対する指導、違法業者に対する行政処分等の取組を徹底するほか、振り込め詐欺救済法の的確な運用等により、被害回復に努める。
また、震災により、消費生活センター等が被害を受け、地域の消費者からの苦情相談等に対応できない状況にあることから、独立行政法人国民生活センターに「震災に関連する悪質商法110番」を開設するとともに、被災地への専門家の派遣等を行う。住宅については、震災に便乗した点検商法や法外な工事費等を請求する悪徳リフォームの発生が懸念されることから、被災住宅の補修について、診断・相談及び事業者の紹介を行う窓口を「住まいるダイヤル」に設置した。
さらに、地方公共団体や独立行政法人国民生活センターを始めとした関係機関・団体等に対し、犯罪利用口座凍結のための金融機関への情報提供の徹底を要請するとともに、金融機関に対しては、義援金募集口座開設時の本人確認の厳格な実施等の取組の徹底を要請する。
加えて、資金獲得等を目論む暴力団等による官民の復旧・復興事業等への参入・介入を排除するため、関係機関・団体等に必要な働き掛けを行うなど、引き続き官民が連携した暴力排除活動を徹底する。
(3) 適切な検視、身元確認等の推進
【警察庁・厚生労働省・国土交通省・防衛省】
震災による犠牲者は多数にのぼる上、津波の影響もあり身元確認が困難となっていることから、適切な検視、身元確認等を行うため、警察と医師・歯科医師が一層の連携を行い、必要な資機材の整備を図るとともに、身元不明遺体の適切な引渡しのために警察と地方公共団体との連携・協力を推進する。
また、海上保安庁においては、海上で発見した遺体について、警察と連携し、震災との関連に留意しながら、適切な検視、身元確認等を推進する。
さらに、防衛省においては、警察や地方公共団体からの協力の要請に基づき、検討の上、必要な協力を実施する。
(4) 無人店舗、家屋等の防犯対策
【警察庁・金融庁・国土交通省】
空き巣や出店荒らしといった被災地ならではの手口による窃盗犯罪を抑止・牽制するため、被災地の警察官に加え、全国から被災県に対し、警察官やパトロールカーを派遣し、警戒・警ら活動を推進する。
また、海上保安庁においては、災害救助活動に合わせ、被災地周辺海域を漂流中の無人船舶及びその設備等の窃盗行為等を防止するため、警戒に努める。
さらに、関係省庁が連携し、それぞれの所管する業界の中央団体を通じて、無人店舗、家屋等の防犯対策の強化を呼び掛けるとともに、避難住民等に対して、犯罪情報の提供や防犯指導等を適時適切に実施する。
(5) 避難所における防犯対策、相談への対応等
【内閣官房・内閣府・警察庁・法務省】
避難所においては、窃盗を始めとした各種犯罪のみならず、流言飛語や生活上の様々なトラブルが生じ、これが被災者の不安を殊更に増大させることが懸念されることから、このような不安を解消し、被災者の生活の安全・安心を保持するため、的確な情報の発信に努めるとともに、被災地の警察官に加え、全国から被災県に対して警察官やパトロールカーを派遣し、警戒・警ら活動を推進する。
また、全国から女性警察官を派遣し、被災者が相談しやすい環境を整備し、避難所等における相談の受理や防犯指導、流言飛語への対応等を行う。その際、必要に応じ、保護司等の関係機関・団体と連携する。
さらに、長期化する避難所での生活等に伴うプライバシー侵害等、震災に伴って生ずる様々な人権問題に対処するため、人権相談に応じるほか、女性や子育てに配慮した避難所の設計や安全な生活環境の整備を推進するとともに、避難所運営への女性の参画や意向の反映を促進する。
また、女性に対する暴力に関する相談サービス等の周知を図る。
(6) 被災地等における子ども・女性への支援
【内閣府・警察庁・文部科学省・厚生労働省】
被災地等の子ども・女性の犯罪被害に遭う不安を解消し、生活の安全・安心を保持するため、被災地の警察官に加え、全国から被災県に対して警察官やパトロールカーを派遣し、警戒・警ら活動を推進する。
また、全国から女性警察官を派遣し、関係機関・団体と連携して、避難所等における子ども・女性からの相談の受理、防犯指導等を行う。
さらに、地域ぐるみの学校安全体制整備の取組に対する支援により、子どもの安全を確保するほか、保護者用リーフレットの配布等により、被災した子どもの心のケアの充実を図る。
加えて、女性や子育てに配慮した避難所の設計や安全な生活環境の整備を推進するとともに、避難所運営への女性の参画や意向の反映を促進する。
また、女性の悩みや女性に対する暴力に関する相談サービス等の周知を図る。
さらに、妊産婦や乳幼児は、被災したことにより、身体的・精神的に厳しい状況に置かれていることから、避難所等で生活する妊産婦や乳幼児が専門的・長期的な支援を受けられる体制の整備に努める。
また、震災によって日常生活を奪われ、避難生活を送ることを余儀なくされた児童の生活状況の激変に伴う様々な不安や悩みに対して、児童福祉に関わる専門職種の者による相談・援助によって、これらを解消し、被災前の生活や心理状態を取り戻すための支援を行う。
(7) 在日外国人への支援
【外務省】
在京各国大使館から在日外国人の安否確認依頼についての情報を聴取し、関係機関と共有するとともに、今後の身元確認作業のため、在京各国大使館に対する説明会を実施する。
また、外務省のウェブサイトにおいて、日本語、英語、中国語及び韓国語により、地震に関する情報提供を実施するとともに、外交団及び国際機関に対し、関係連絡先、英語の情報提供サイト、福島第一及び第二原子力発電所事故に係る情報等を適時適切に周知する。
(8) 震災に起因する法的トラブルに関する情報提供、法律相談等
【法務省】
日本司法支援センターにおいて、関係機関と連携の上、被災者の生活再建に役立つ法制度等の情報を提供するとともに、被災地に弁護士等を派遣して法律相談等を実施するなどの取組を通じ、震災に起因する相続問題、土地建物の所有権・賃貸借問題、震災に便乗した詐欺等の法的トラブルを抱え、経済的・精神的に不安定な状況に陥っている被災者への支援を推進する。
(9) ガソリンスタンド等における犯罪・トラブルへの対策
【警察庁・経済産業省】
ガソリンスタンド等における犯罪・トラブルを未然に防止するため、被災地の警察官に加え、全国から被災県に対して警察官やパトロールカーを派遣し、警戒・警ら活動を推進する。
また、関係省庁が連携して、ガソリンスタンド等における犯罪・トラブルの実態を的確に把握し、必要に応じ、関係業界団体に対する協力要請を行う。
さらに、トラブルの要因の一つとなっている燃料の供給不足を解消するため、ガソリン・軽油等の燃料の確保に努める。
(10) 流言飛語への対応
【内閣官房・警察庁・総務省・経済産業省】
地震や原子力発電所事故に関する不確かな情報等、国民の不安をいたずらにあおる流言飛語が、口伝えや電子メール、電子掲示板への書き込み等により流布されており、被災地等における混乱を助長していることから、このような流言飛語に惑わされることのないよう、関係省庁が連携して、広く注意喚起のための措置を講じる。
特に、インターネット上の流言飛語については、関係省庁が連携し、これらの実態を把握した上で、インターネット利用者に対して注意喚起を行うとともに、サイト管理者等に対して、法令や公序良俗に反する情報の自主的な削除を含め、適切な対応をとることを要請し、正確な情報が利用者に提供されるよう努める。
また、国、地方公共団体等は、あらゆるメディアを通じて信頼できる情報発信に努める。
なお、国、地方公共団体等が民間ソーシャルメディアを活用するに当たっては、認証の取得等の対策を講じることで、情報源としての信頼性を確保し、インターネット上の流言飛語を抑止する。
(11) 雇用創出のための基金事業を活用した警備員等による警戒活動
【警察庁・厚生労働省】
被災地等における犯罪の抑止・牽制を徹底するためには、警察を始めとする様々な関係機関・団体等が連携した上で、きめ細かい警戒活動を実施する必要があることから、地方公共団体に対して、避難所等における警戒活動を実施するため、緊急雇用創出事業等の雇用創出のための基金事業を活用して、当該業務を警備業者に委託するように、又は求職者を直接雇用するように、働き掛ける。
また、当該警備業者等に対しては、活動ノウハウや犯罪情報の提供、合同での警戒活動の実施等による活動支援を行う。
(12) ボランティアによる防犯活動
【内閣官房・警察庁】
被災地等における犯罪の抑止・牽制を徹底するためには、警察を始めとする様々な関係機関・団体等が連携した上で、きめ細かい警戒活動を実施する必要があることから、被災地において自主的な防犯活動を行う団体に対する腕章、青色防犯灯等のパトロール用品の提供、合同での警戒活動の実施等による活動支援を行う。
(13) 交通秩序の回復
【警察庁・国土交通省】
被災地においては、未だ復旧が進まず通行不能となっている道路が多数存在し、多くの信号機が損壊している状況にあることから、通行止め等の情報を運転者に提供するほか、信号機の損壊した交差点の通行方法を広報するとともに、必要に応じ警察官の手信号等による交通整理等の街頭活動を行う。
また、被災地周辺海域において、損壊した航路標識の早期復旧、水路測量等による航路啓開及び航行警報による船舶への安全情報等の提供を行うとともに、福島第一及び第二原子力発電所周辺海域の警戒、付近航行船舶への情報提供・指導等を行い、海上交通の安全を確保する。
(14) 被災地等における安全確保のための警察活動基盤の整備
【警察庁】
被災地等における市民の安全を確保するために警察活動基盤を確立する必要があることから、地方警察官の増員を始めとする人的基盤の強化、震災等により被害を受けた警察施設、装備資機材、警察情報通信基盤等、物的基盤の回復・整備を復興期までを通じて行う。
(15) 被災者等への的確な情報の発信
【内閣官房ほか各府省庁】
被災地等における安全・安心を脅かす事例、各府省庁における対策、トラブルの予防に役立つ情報等を、首相官邸・各府省庁のウェブサイトや政府と連携する民間のウェブサイト(「助けあいジャパン」等)のほか、ラジオ、壁新聞等被災者等の環境に配慮した媒体を通じ、的確に発信する。
2 復旧期における治安回復・維持
(1) 新設店舗等の防犯対策
【警察庁】
関係省庁が連携し、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等を始めとした各種店舗を新設する際には防犯カメラ等の防犯設備を設置するなど、防犯性能の高い店舗づくりに努めるよう、関係業界団体を通じて働き掛ける。
(2) 新規に設置するATMの防犯対策
【警察庁・金融庁】
金融機関、コンビニエンスストア等において新規に設置されるATMについては、金融機関に対し、ATMに係る犯罪の手口等を踏まえた上、防犯カメラの設置等の防犯対策の取組を要請する。
また、関係省庁が連携し、ATMの設置の際には既存の防犯基準を満たしたものとするよう、関係業界団体に対して働き掛けを行う。
(3) 仮設住宅における防犯対策
【警察庁】
仮設住宅やその周辺における自主的な防犯活動に対して支援を行うほか、仮設住宅入居者等に対して、犯罪情報や地域安全情報を適時適切に提供するとともに、的確な防犯指導を実施する。
(4) 戸籍の再製
【法務省】
震災により、戸籍の正本が滅失した市町村があり、親族的身分関係の証明が困難になることが懸念されることから、当該市町村については、管轄する法務局が保存する戸籍の副本・届書等の資料に基づき、早期に戸籍を再製する。
なお、正本が再製されるまでの間は、それぞれの市町村の状況に応じて、市町村又は管轄法務局において、戸籍の副本に基づき、「戸籍の副本に係る証明書」(一般行政証明)を発行する。
(5) 登記に係る地図の修正による土地境界の復元
【法務省・国土交通省】
震災により、土地が大きく変動している上、土砂等が堆積して境界標が失われるなどして、土地境界が不明となっていることから、国土地理院が公表する基準点座標等の補正情報に基づき、登記所備付地図に記録されている座標値を補正するとともに、補正後の登記所備付地図を用いて、現地において計画的な境界の復元に努める。これにより、境界紛争を防止するとともに、今後の復興事業に役立てる。
(6) 復旧活動に伴う事故の防止と円滑な交通流の確保
【警察庁】
道路の復旧に合わせて、被災した信号機、道路標識等の交通安全施設の早期復旧を図り、復旧活動に従事する車両等の制限外積載許可等に際し適切な指導を行うことにより、交通の安全と円滑を確保する。
3 復興期のまちづくりにおける治安基盤の確立
(1) 犯罪の起きにくいまちづくり
【警察庁・国土交通省】
被災地を復興するに際しては、被災者の生活をより安全・安心なものとするため、あらゆる防犯性能を備えたまちづくりを推進するとともに、地域コミュニティの再生の状況に応じて警察によるきめ細かな防犯対策を行ったり、防犯ボランティア活動の始動・活性化を図ったりすることにより、犯罪の起きにくいまちを実現することが重要である。
このため、関係省庁が連携し、防犯に配慮した見通しの良い植栽の整備、コミュニティスペースの確保等の防犯に配慮した環境設計、防犯カメラ・防犯灯等の防犯設備の計画的配置、防犯性能の高い建物部品の普及、警察官による被災者向けの公営住宅等の警戒・警ら活動の実施、防犯ボランティアの立ち上げや活動への支援等、女性を含む地域住民の参画を得つつ、犯罪の起きにくいまちづくりを総合的に推進する。
(2) 安全な交通環境の整備
【警察庁・国土交通省】
復興した被災地においては、誰もが安心して円滑に移動できる交通環境が重要である。
このため、新たなまちづくりのための道路整備計画に合わせ、信号機、道路標識、交通管制センター等の交通安全施設等の整備を推進するとともに、最新の情報通信技術も活用して、一層安全で快適な道路交通を実現する。
【転載終わり】--------------------------------------
全般的に警察が担当する治安に関する項目が多く、それだけ被災地での治安の維持、安全の確保が急務であると読み取ることができます。
また、その治安に関する部分では、平成15年に犯罪対策閣僚会議が策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」にうたわれた項目から、今回の被災地に強く関係するものを列挙し、現在の状況に適合させた、という印象を受けます。
↑私は、かつて国、県に協力をいただき、地域防犯について研究した経緯があり、今回の政府発表にも非常に関心があります。
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宮尾 孝三郎
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