« “立ち位置”違えば、“見え方”変わる | トップページ | 湖岸の水草(その後) »

2009年10月17日 (土)

人身売買という犯罪

日本における人身売買について、あまり知られていませんが、平成17年6月16日162会期衆議院本会議に提出されていた刑法などの一部を改正する法律案を全会一致で可決し、同法案が成立しています。ちなみに施行は平成17年7月12日であり、具体的には『刑法改正され人身売買罪が新設』されたのであります。

刑法

(人身売買)
第二百二十六条の二  人を買い受けた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2  未成年者を買い受けた者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
3  営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
4  人を売り渡した者も、前項と同様とする。
5  所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、二年以上の有期懲役に処する。

さて、ここできっかけとなったアメリカ合衆国国務省が発表した『人身売買報告書』について知る必要があります。

現在、在日アメリカ大使館HPにおいてアメリカ合衆国国務省人身売買監視対策室がまとめた「2009年人身売買報告書(抜粋)」が閲覧できます。

【以下転載開始】--------------------------------------

日本(第2階層)

本は、強制労働や商業的な性的搾取のために売買される男女や子供の目的国および通過国のひとつとなっている。

東アジア、東南アジア、東欧、ロシア、および中南米の女性や子供が、商業的な性的搾取のために日本へ売買されてきており、また、中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、その他のアジア諸国からの移住労働者は男女共に、時として、強制労働の被害者になることがある。

公式に認知された人身売買被害者のほとんどは、仕事を求めて日本に自発的に移動してくるものの、後に最高5万ドルの借金を負わされることによって、性的搾取や労働搾取を目的とする人身売買の対象になりやすくなった外国人女性である。

また、多数の日本人女性や少女も性目的の人身売買被害者として報告されている。

過去1年間に、多数のパラグアイ人の子供が、強制労働目的で日本へ売買された。

人身売買業者は時に借金を利用して、日本の巨大な性風俗産業で移住者に売春を強要する。

外国人、日本人共に、最初は自発的に性風俗産業に入るが、結局は不本意な隷属状態に置かれた被害者になってしまう女性が多い。

売買された女性たちは、厳しい経済的支配を受けるだけでなく、助けを求めたり逃げることができないように、肉体的・精神的方法で威圧され、あるいは暴力を受けることもある。

人身売買問題を監視する独立した組織や個人、および組織犯罪の専門家の大半は、組織犯罪集団(ヤクザ)が、直接的にも間接的にも、人身売買で引き続き重要な役割を果たしている、と考えている。

人身売買業者が、日本人の女性や少女をポルノや性風俗産業で強制搾取の対象とすることが多くなりつつある。

外国人でも日本人でも、女性被害者はしばしば、恥辱や、人身売買業者の報復を恐れるあまり、当局に助けを求めることに消極的である。

日本は、東アジアから北米に売買される人々の通過国でもある。日本人男性は、引き続き、東南アジアにおける児童買春ツアーの需要の大きな源泉となっている。

本政府は、人身売買撲滅のための最低基準を十分に満たしていないが、満たすべく著しく努力している。

性目的の人身売買で2008年に起訴された件数は増えているが、有罪判決を受けた人身売買の犯罪者の大半は執行猶予となった。

日本はまだ、労働搾取目的の人身売買の問題に効果的に対処していない。

政府による被害者認知の取り組みは、依然として不十分である。

日本への勧告: 特に地方において、コールガール・サービス(デリバリー・ヘルス)、インターネットの「援助交際」サイト、ソーシャル・ネットワーキング・サイトを含む、商業的性風俗業での人身売買を捜査するために、積極的な法執行の取り組みを拡大する。

人身売買被害者をより多く認知するために、一定の正式な被害者認知手続きを確立して実施し、その手続きの活用方法について、売春で逮捕された人、外国人研修生・技能実習生、その他の移住労働者と接する職員を対象に研修を行う。

売買されたことに直接起因する罪を犯したことで、人身売買被害者が罰せられることがないようにする。

労働目的の人身売買の起訴件数を増やす。

警察庁と日本大使館・領事館に対し定期的に正式な指示を出し、児童に対する性的搾取の疑いで日本人が捜査の対象になる場合に、現地の当局に協力するよう職員に指示する。

被害者のためのシェルターにおいて、引き続き、通訳・翻訳サービスや被害者の母国語を話す心理カウンセラーを利用しやすくする。

認知された被害者全員に対し、無料で法的支援が受けられることと、入国管理上の救済措置という選択肢があることを通知する。

起訴

本政府は、過去1年間に、法執行面で人身売買と戦う一定の努力を示したが、有罪判決を受けた人身売買犯罪者のほとんどについて十分な刑罰を科さなかった。

政府は、本報告書の対象期間において、労働搾取を目的とする人身売買の問題に十分対処しなかった。

2008年に政府が報告した起訴件数は29件、有罪判決は13件だったが、すべて性目的の人身売買犯罪であった。

これに対し、2007年の起訴件数と有罪判決の数は、それぞれ11件と12件であった。

犯罪者たちは、懲役6カ月から4年の判決を受けたが、有罪となった13人のうち11人は執行猶予を受け、実刑にはならなかった。

政府は、人身売買に直接的・間接的に関与する組織犯罪集団に対して十分な捜査・起訴を行わず、有罪判決を追求しなかった。

逮捕されるのは末端の犯罪者に限定される傾向にある。

2005年の刑法改正およびその他の刑法の条文のほか、労働基準法、売春防止法、児童福祉法、児童買春・児童ポルノ処罰法などのさまざまな法律は、人身売買とそれに関連する幅広い活動を刑事罰の対象としている。

しかし、既存の法的枠組みが、すべての過酷な形態の人身売買を刑事罰の対象とするほど、十分に包括的なものかどうかは明確でない。

2005年の刑法改正は、人身売買について最高7年の懲役刑という、十分に厳格な刑罰を規定している。

しかし、人身売買の犯罪の立証に必要な証拠書類をそろえるのが難しいために、こうした法律の適用が妨げられてきた。

強制労働を含む労働搾取は、労働組合、非政府組織(NGO)、シェルター、マスコミによって、引き続き広く報告されている。

政府による支援ホットラインへの通報に基づき、NGOは、2008年に「研修生」として募集された外国人労働者の約5%に当たる3400人以上が、労働目的の人身売買の潜在的な被害者であったと推定している。

入国管理局と労働基準監督署は引き続き、企業による「外国人研修生・技能実習生制度」(以下「外国人研修生制度」とする)の悪用事例を何百件も報告した。

報告された事例には、詐欺的な雇用条件、移動の制限、給料の未払い、借金による束縛などが含まれる。

労働者の権利団体によると、研修生から渡航書類を取り上げ、逃避防止のために移動を制限する場合もあった。

研修生にサービス残業を強いたり、強制預金が違法であるにもかかわらず、企業が管理する銀行口座に賃金を自動的に振り込む企業が数社あったことが報告された。

本報告書の対象期間において、労働目的の人身売買で有罪となった事例はなかった。

政府は、外国人研修生制度の監視と規制に向け努力を示し始めているが、この制度で労働目的の人身売買という罪を犯している可能性がある者を捜査し、起訴し、有罪とするための措置はまだ講じていない。

日本で不法労働者を支援するNGOは、政府はいかなる不法労働者も人身売買被害者と見なすことに消極的であり、むしろ契約詐欺の被害者と規定している、と報告した。

本報告書の対象期間において、元政府職員が5万4000ドルのわいろを受け取り、280人のフィリピン女性への興行ビザを容易に発給するために、政府とのコネを利用した、という報道があった。

これらの女性たちは、チャリティー・コンサートに参加するはずだったが、結局はバーでホステスとして働くことになった。

法務省と外務省の職員がビザを発給した。

政府は、証拠不十分であることを理由に、人身売買との関連の可能性があるこの不正行為に関与した疑いがある者に対して、捜査も起訴も行っていない。

不正行為は、社会的に容認された日本の巨大な娯楽業界において深刻な問題となっているが、それは主に、この業界が経済的に大きな力を持っているためである。

保護

報告書の対象期間における被害者の保護は、依然として十分ではなかった。

日本政府によって認知された人身売買被害者の数は、3年連続で減少した。

2008年に法執行当局が認知した被害者の数は36人で、2005年の116人、2006年の58人、2007年の43人から減少した。

この数は推定される日本の人身売買問題の規模からすると少なすぎると思われる。

公的機関や民間団体の両方により、労働搾取が報告されているにもかかわらず、2008年に政府が認知した労働目的の人身売買被害者は1人だけで、その事例は性目的の人身売買事件に関連するものであった。

人身売買被害者と共に活動するNGOは、被害者からの話に基づくと、外国人労働者や、性風俗産業で働く外国人女性など、脆弱(ぜいじゃく)な人たちの中から被害者を探し出すことに、政府が十分に積極的でないとして、引き続き懸念を表明している。

政府とNGO間の協力の拡大は、人身売買問題との戦いにおいて政府が利用できる最も有効な手段のひとつであろう。

2008年に政府は、国際移住機関(IOM)に付託してリスク評価や正式な本国への帰国手続きを行うことなく、人身売買被害者として認知された36人のうちの18人を本国に帰国させた。

政府は、こうした本国への早期帰国は、被害者の要請に基づくものであったと言っている。

日本は、正式な被害者認知手続きを採用しておらず、また人身売買問題専任の法執行官や社会福祉担当職員も置いていない。

本報告書の対象期間に、入国管理局が人身売買事件のデータベースを作成した。

警察、裁判官、検察官を対象とする正規の研修コースに詳しいNGOは、潜在的被害者の中に、入国管理法違反など、人身売買されたことに直接起因する犯罪で罰せられた者がいると思われるため、こうした研修コースをさらに改善してほしいという希望を述べた。

政府は、最初は自発的に性風俗産業に入るが、後に人身売買被害者になった人々を、常に人身売買の被害者として認識しているわけではないと思われる。

2008年10月に、警察は性風俗施設の強制捜査を行い、タイ人の人身売買被害者12人を認知した。

ほかにも人身売買被害者の可能性がある女性が3人いたが、不法移民と見なされなかったために保護されなかった。

これら3人は、その後ビザが切れて不法滞在の状況にあり、現在行方不明となっている。

このことから、法執行者を対象とした被害者認知に関する研修をより充実させること、潜在的被害者によく見られる警察への不信感を克服するために、被害者の母国語を話す、訓練を受けた人身売買問題のカウンセラーを迅速に利用できるようにすること、再教育訓練と合法的な就労方法の可能性という点で、日本政府が潜在的被害者に提供する奨励策を向上させること、などが必要であることが分かる。

2008年に認知された33人の人身売買被害者のうち30人は、政府のシェルターである婦人相談所(WCC)に保護された。

被害者は、WCC滞在中に政府が助成する診療を受けることができ、また心のケアを受けた被害者もいた。

シェルターに滞在中、あるいは裁判に協力している間に、被害者が就労やその他の方法で収入を得ることを許されることは決してなかった。

人身売買の被害者であることのトラウマ(精神的外傷)に加え、収入を得る機会の欠如は、被害者の大半が本国への帰国に同意する要因となっていると思われる。

政府は、人身売買の犯罪の捜査と起訴への協力を被害者に奨励しているにもかかわらず、被害者に協力を促すような環境を提供しなかった、とNGOは報告している。

政府は、就労機会など、協力を促す奨励策を合法的に提供することが可能にもかかわらず、2008年にこのような支援を提供された被害者は1人もいなかった。

政府が人身売買被害者に法的支援を提供した事例は、これまでに1件も報告されていない。

政府は、人身売買被害者に長期間の在留ビザを発給することが可能だが、外国人の人身売買被害者にそのようなビザを発給された事例はまだない。

日本は、人身売買被害者の本国への帰国と社会復帰を支援するために、引き続きIOMに年間30万ドルを提供した。

防止

報告書の対象期間に、日本政府は、人身売買に対する認識を高めるための取り組みを引き続き強化した。

政府は引き続き、ポスターとパンフレットそれぞれ約3万枚と5万部を、地方自治体、大使館、空港、港、およびNGOに配布した。

入国管理局は、人身売買に対する意識向上のために5カ国語で作成したパンフレットを配布する取り組みを続けた。

本報告書の対象期間に、警察大学校で、人身売買に関する授業やセミナーが開講された。

政府は、日本人の児童買春ツアーの需要を減少させるために、児童買春ツアーに関するポスターを空港内や港湾施設内に掲示した。

多数の日本人男性が、子供との性行為を目的に、特にフィリピン、カンボジア、タイといったアジア諸国に旅行する状況が続いている。

日本の裁判所は、外国で子供を性的に搾取した日本人に対する域外管轄権を有するが、本報告書の対象期間に、政府が児童買春ツアーを理由に日本人を起訴した事例は1件もなかった。

これもまた、懸念される分野である。

政府は、インターネットを利用した形態の売春行為に対する強制捜査など、売春が行われている施設に対する警察の強制捜査を定期的に実施したが、売春行為の需要を減らすための取り組みはほかに何も行わなかった。

本報告書の対象期間に、政府は東南アジアの人身売買被害者の保護を目的とする500万ドル規模のプロジェクトへの資金支援を開始し、世界各地におけるその他の多数の人身売買対策プロジェクトへの資金支援も続けた。

日本は、国連で2000年に採択された人身売買議定書を批准していない。

【転載終わり】----------------------------------------

非常に考えさせられる問題であります。果たして地方都市ではどのような状況なのでしょうか?

滋賀県における平成20年度の犯罪発生状況を見ますと『略取誘拐・人身売買 2 件』とあります。ちなみに平成19年度も2件であります。

大津市は、「多様な文化が共生するまちづくり」を推進しておりますが、このような不幸な事件が大津市で起こらないよう、「人権を尊重するまちづくり」と関連づけ、滋賀県警察から情報提供を受け、大津市における実態把握に努める必要があるのかもしれません。

宮尾 孝三郎

« “立ち位置”違えば、“見え方”変わる | トップページ | 湖岸の水草(その後) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« “立ち位置”違えば、“見え方”変わる | トップページ | 湖岸の水草(その後) »

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト
無料ブログはココログ